アンドン(Andon)は、工場の生産ラインにおける稼働状況や異常を直ちに知らせる視覚的管理ツールです。発生した異常や進捗をランプ・表示板・ブザーなどで「見える化」し、担当者が即時対応できる仕組みとして機能します。これにより、問題の早期発見・迅速な対応・生産性向上・品質改善が可能になります。また、単なる通知機能にとどまらず、現場の情報共有と改善活動を支援する重要なコミュニケーション手段です。
アンドンは工場の生産ラインで、トラブルや進捗状況、運搬指示などを回転灯や表示板によって「見える化」する管理ツールです。「生産ラインのトラブル発生の頻度が高く、生産性が上がらない」あるいは「異常発生の対応に人手と時間がかかりすぎている」と感じているなら、アンドンの導入をおすすめします。
アンドンを使えば、生産ライン全体の状況やトラブルの発生をリアルタイムで把握し、スムーズな指示や対応が可能です。また、パソコンに接続すれば集中管理や集計もでき、業務改善に役立ちます。
当記事では、アンドンを使うメリットや種類、活用例、導入前に確認しておきたい運用のポイントを解説します。
目次
アンドンとは、工場の生産ラインにおいて、異常発生や運搬指示などの情報を関係者に伝えるために現場に設置される表示システムです。アンドンにより、生産ラインのトラブルや状況が「見える化」されます。関係者はアンドンに表示される情報からリアルタイムに状況を把握でき、スムーズに対応することができます。
表示内容は現場によって異なりますが、共通して扱われるのが異常発生時の表示です。アンドンで生産ラインの異常が確認できた場合、担当者は速やかに対応した上で問題の起きた原因や所在を明らかにし、再発防止に努める必要があります。
このような対応を繰り返す中で、トラブル事例の蓄積やデータ収集、解析を行えば、アンドンの利用価値はさらに上がります。トラブルの事例データをその後のトラブル処理に活用できるためです。結果として、アンドンによる「見える化」はライン全体の生産性の向上につながります。
生産性向上は、工場の生産ラインで最も重要な従業員が一丸となって目指すべき目標です。生産性向上という目標の鍵となりうるアンドンは、現場で重視されています。
アンドンは異常を見える化し、問題を迅速に解決することに役立ちます。見える化の目的は、仕事で発生する問題を常に見える状態にすること、および問題が発生しにくい環境を整備することです。
アンドン設置の主な目的は、生産ラインの効率性と品質を定期的に確認し、透明性を高めることです。その背景には、目で見る管理(異常管理)の重要性があります。視覚からの情報で何が正常で何が異常事態を顕在化し、標準化することで異常な状態を即座に発見できます。人間の視覚は強力な情報処理能力を持っているので、色、形、動きを通じて直感的に大量の情報を取り込むことが可能です。
アンドンシステムは、この人間の視覚的な認知能力を活用して、潜在的な問題を視覚的に表示し、すぐに行動を起こせるようにします。ただし、情報を得ること自体が目的ではないので注意してください。あくまで、即座に行動をとり、生産ラインを安定・向上させることが目的です。また異常が起きた際には、管理監督者は異常の原因を突き止め、再発防止に努めることが重要です。
アンドンのほかにも、異常を見える化する手段として、標準3票、5S、かんばんといった仕組みも活用されています。
アンドンはトヨタ生産方式の一部を形成する重要な要素です。アンドンは、生産現場の視覚的な管理と異常が発生した際の迅速な反応を可能にします。
トヨタ生産方式は無駄を排除し、効率性を高め、価値を最大化するという目標に基づいた一連の原則、実践、哲学から成る管理システムとして知られています。この生産システムは、製造業における品質と効率性を最大化するために、20世紀初頭の日本でトヨタ自動車工業(現在はトヨタ自動車株式会社)によって開発されました。その後、トヨタ生産方式は世界中の多くの企業で採用され、その効果が証明されています。
トヨタ生産方式の中心にあるのが、「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」の2本の柱です。
トヨタ生産方式における「自働化」は、自動車工業をはじめとする製造業において用いられる概念です。本質は「自動的な問題発見と解決」にあり、具体的には生産ライン上の機器やシステムが、問題や異常が発生した場合に自動的に停止する能力を持つことを指します。これは、アンドンが重要な役割を果たす部分です。
自働化には、品質の保証と問題解決の即時性の強化という2つの重要な目的があります。第1に、機器が自動的に停止することで、問題がさらに大きな問題にエスカレートすることを防ぎ、不良品が生産ラインを通過するのを回避します。第2に、問題が発生した時点でラインが停止することにより原因が即座に識別され、迅速な解決が可能となります。
たとえば、ある部品の組み立て中にボルトが欠けているとき、機械は自動的に停止します。これにより、部品の欠陥が生産ライン上でさらに進行するのを防ぎ、また問題が発生した具体的な場所と時間を確認できるため、原因の特定と解決が迅速に行えます。
「自働化」の概念は生産プロセスの効率性と品質を向上させるだけでなく、持続可能な改善を推進し、組織全体の学習と成長を促す重要な役割を果たしています。
ジャスト・イン・タイムとは、製品が必要とされる正確な時点で必要なだけ生産するという原則です。ジャスト・イン・タイムにより在庫を最小限に抑え、リソースの浪費を防ぎ、効率を向上させます。
ジャスト・イン・タイムには、生産と在庫管理における無駄を削減するという目的があります。生産ラインに必要な部品が供給されるタイミングは、実際の製品の生産スケジュールに直接連動しているため、不必要な在庫の保管と保管に伴うコスト、スペース、リソースの浪費が大幅に削減される仕組みです。仕掛品や在庫リスクを極限まで削減した無在庫経営が実現でき、市場環境の変化に柔軟に対応しやすくなるのが特徴です。
ジャスト・イン・タイム方式を効果的に実行するためには、信頼性の高い供給者との強固な関係、正確な需要予測、柔軟な生産能力が必要になります。
アンドンは、製造業や生産ラインで広く利用されている視覚的な警告システムであり、特定の状態や問題を色や信号を使って示すものです。一般的なアンドンシステムでは、緑色、白色、黄色、赤色のランプが使われます。
| 緑色 | 生産ラインが正常に稼働していることを示します。 |
|---|---|
| 白色 | 消耗品や工具の交換中、品質の確認中といった内容を示します。 |
| 黄色 | 刃物や工具の交換が必要であることを示します。担当者は交換作業にいくことが必要です。作業完了後は機械を再起動します。 |
| 赤色 | 何らかの異常や、機械の停止を示します。機械の点検、復旧作業が必要です。原因を特定し、再発防止策を講じることも重要です。 |
トヨタ生産方式を取り入れた生産現場は目で見る管理が重視されるため、多くの現場でアンドンが使用されています。
アンドンそのものは、情報の表示を行うというシンプルな仕組みのシステムです。一方で、使用目的によってさまざまな使い方や工夫がなされるため、種類や使用方法は多種多様です。中でも、下記のような表示を目的とした使用が多い傾向にあります。
ここからは3つの表示について、それぞれのアンドンの目的や使用方法の解説をします。
現場で起きたトラブルや、リアルタイムの人の動きや物の状態といった各ラインの流れを総合して表示するアンドンです。個別ラインの状態だけでなく、すべてのラインの状況をまとめて表示するため、個別ライン同士の距離が離れていても全体を把握できます。
工場の規模が大きければ大きいほど全体を把握するのは難しく、トラブル対応にも時間がかかります。対応中に生産ラインを停止しておかなければならない場合、生産性が落ちかねません。しかし、総合アンドンを効果的に活用できればタイムロスを最小限に抑えられます。
生産ラインにおいて、設備や機械の停止や故障、品質不良といった異常が発生した際に、関係者に知らせるためのアンドンです。トラブル発生に気がついた作業者がアンドンを点灯して、担当者を呼び出します。担当者は状況を確認し、トラブル対応に着手します。
トラブル発生後の対応時や作業中には、アンドンの色や表示の設定が変えられます。色や表示の変更により、他のラインの関係者や全体の管理監督者などにリアルタイムで状況を周知できます。
工場の生産ラインでは部品や資材が絶え間なく運搬されています。しかし、生産の進捗やトラブルなどの影響を受けるため、常に一定数の部品や資材を運搬し続けるのは困難です。どの荷物をどこにどれだけ搬送する必要があるのかは、その時々で異なります。そこで、アンドンの運搬指示による調整が有効です。
工場全体や個別ラインの状況をリアルタイムで把握している管理者が、アンドンによる指示を行います。運搬状況の「見える化」により、設備の使用や稼働を必要最低限に留められるため、無駄なコストやエネルギーの削減にもつながります。
アンドンは仕組みがシンプルな分、運用方法の工夫や機能の拡張によって活用の可能性が広がります。アンドンを導入する際や使い方を見直す際には、十分に検討しましょう。
ここからは、アンドンの導入や見直しにあたり注意すべき4つのポイントを紹介します。
アンドンのランプの色が変わっても、警告が無視されたり対応が遅れたりすると、アンドンシステムの目的が損なわれます。アンドンは、視覚的な信号の発信だけで効果を発揮するものではなく、信号の発信が即座な担当者の行動につながることで、初めて真価が発揮されます。
そのため、作業員や管理監督者がアンドンの信号の意味を正しく理解し、どのような行動が必要かを正確に知っていることが必要です。また、アンドンが点灯した場合にすぐに対応できる体制を整備することも重要となるでしょう。
「誰かがやってくれるだろう」「念のため一応情報を表示しておこう」といった考え方は、アンドンを設置する必要性がなくなります。アンドンの点灯を見ても誰も動かないような表示はなくしましょう。
現場担当者の方は第三者の報告ではなく、常にリアルタイムでアンドンから情報を得るように心がけてください。
アンドンは、生産ラインや設備のトラブルや運搬状況を表示するための、便利な「見える化」ツールです。しかし、ただ表示させているだけでは意味がありません。アンドンの効果を最大限に発揮させるには、社内で表示ルールを統一してスタッフに周知した上で、全員が遵守する必要があります。
たとえば異常発生時にアンドンが点灯しても、誰もそれに気付けなければ、あるいは誰が対応するかが決まっていなければ迅速な対応は不可能です。また、アンドンの運搬指示の表示に従う人がいなければ指示を出しても意味がありません。
アンドンでどのような表示を出すのか、それぞれの表示に対して誰がどのように対応するのかといった最低限のルールを決めてから、アンドンの運用を始めましょう。アンドンの導入自体が意識改革につながる可能性もあります。
アンドンの導入によってできることは、トラブル発生時の点灯や運搬指示の表示だけではありません。アンドンは、PC(ネットワーク)と連携させれば機能の拡張が可能となります。
たとえば、工場や生産ライン全体の進捗状況をリアルタイムで把握し、個別ラインや事務所、関係者の手元に情報を伝達したり作業指示を出したりなどの集中管理が可能です。
さらに、トラブル数や発生箇所、内容、対応方法や対応にかかった時間などの履歴を記録・保存できます。トラブルなどのデータを集計・解析すれば、業務量の把握やコスト削減に期待できるでしょう。
どんなに高性能なアンドンでも、設置場所の電波状況によっては性能を発揮できません。工場の敷地面積や規模、生産ラインの位置関係によって受信機の対応エリアは異なります。導入前に必ず確認するようにしましょう。
複雑に入り組んだ構造の建物内などには、電波の届かないエリアもあります。しかし、中継機を設置すれば届くようになるケースもあるため、あらかじめ実際の使用状況と同じ環境で電波テストを行いましょう。
無線式のアンドンは、トランシーバーなどと同じ、特定小電力タイプのものが一般的です。特定小電力は電波距離が約100m前後ある上に、他の回線との混線の少なさがメリットとして挙げられます。
さまざまなアンドンが販売されていますが、最もシンプルなのは飲食店などで使用される呼び鈴タイプです。機能こそシンプルですが、工場ではアンドンとして、病院や介護施設ではナースコールとして利用できます。
工場におすすめの無線アンドンとしておすすめなのが、ビーコールの「ファクトインコール」です。ファクトインコールの特徴は信号入力型送信機である点です。
ファクトインコールの信号入力型送信機には、無電圧入力型と電圧入力型の2タイプがあります。いずれも自動運転機器と接続すると、無人運転ラインのトラブル発生時に自動で信号を送信できます。管理者の操作なしで自動的にトラブル発生を知らせられるので、人の手を煩わせません。
受信表示機をPC接続すると、ファクトインコールの稼働状況を管理できます。トラブル発生の時間や回数を記録しておけば、現場の状況把握や改善に役立ちます。パトライトや外部スピーカーなどへの外部出力機能もあるので、現場の状況に合わせて活用しましょう。シンプルな操作性と多様な機能から、初めて導入するアンドンにもぴったりです。
アンドンは生産ラインの状況やトラブル発生、対応状況を「見える化」する管理ツールです。アンドンを導入することで指示出しやトラブル対応がスムーズになり、生産性の向上が期待できます。
アンドンの主な用途は、個別ラインを総合して表示するもの、トラブル表示をするもの、運搬指示の表示をするものの3つに分けられます。アンドンを導入する際はニーズに応じて選びましょう。
ビーコールでは目的や機能、業種や費用に応じたさまざまな商品を取り揃え、工事不要のデモ機を無料貸出しています。お問い合わせやお見積もりは年中無休、24時間体制で受け付けていますので、アンドンの導入や見直しをご検討の際にはお気軽にご相談ください。